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ポエム

純粋な思考

arthur

はじめに

GWが明けて、研修を終えた新人が私たちの職場にもやってきました。
私の職場は比較的余裕があるところだったため、様々な仕事を体験させて経験を積んでもらっています。そこで、これまで体験した仕事を参考にして、見積もりをやってみようという試みが行われました。
見積もり…まぁ仕事をする上では事前に計画を立てて仕事に取り組むことは悪いことではありません。また、Sierは見積もりから逃れることはできません。そのため、ふーんやってみればいいじゃないか?遅れてもフォローしてあげればいいし、いい経験になるだろう。私は好意的に受け取っていた。その見積もりが開示されてから、リーダーが言ったことを聞くまでは。

純粋な思考

聞いている限り新人は研修形式で一通りの仕事を体験しているようでした。その経験をもとに見積もっている。これは過去の新人の作業実績に基づいた余裕をもって実施できる時間とのことです。新人は作業は知っている、しかし、プロジェクトに所属して仕事をしたことがない。工数を純粋な思考---過去の経験や先入観にとらわれないあるがままの思考ーーーをしている。そのため、新人が出している数字は不安だからとバッファを積むようなことはしていない”純粋”工数なのだそうです。
そのような信用に足る見積もりであるため、みんなも同じ速度でできるはず。もしも、この時間よりも大きな時間を見積もっているのだとすれば、それはこれまでの経験に毒されてバッファを積んでいる。もし、新人が見積もった人月が短すぎるというのであれば、何が抜けているのか具体的な例を用いて、説明するべきである。説明できないのであればそれは不要なバッファである。
とのことでした。

純粋な思考を信じた結果

私たちは純粋な思考を否定する材料がないため、その純粋なスケジュールを受け入れざるを得なかった。そのスケジュールに沿って仕事を勧めることになりました。
結果として、新人も含めて3カ月間毎日3、4時間の残業をしながら、当初に予定された日時に間に合わないという状態で終えました。比較的に私は余裕があったため、他の人の仕事を手伝ったりしていました。
本当に妥当なスケジュールであれば、他社からのサポートなしに毎日8時間勤務で余裕で終わる工数を出したはずです。なぜこのようなことになったのでしょうか?

何がダメだったのか

今回の件で何がダメだったのか理由はいくつかあります。

  • そもそも新人が見積もったタスクには抜け漏れがあった
  • 新人がどのようなタスクがあってその時間になるのかを明かしていない
  • スキルレベルや難易度によってタスクに必要な時間は変わる
  • 許されない反論があった

そもそも新人が見積もったタスクには認識違いがあった

自由なローカルマシン内でプログラムの課題を解いていたようです。確かに業務で用いられる手法については一通り学んでいたようです。しかし、エビデンスの取得方法や規約に則った開発はしていなかったのです。そのようなことは体験していなかったため、どれくらい大変かがわから新人は10行ぐらいのコードを書くのにN分、今回の機能は100行だから10N分で作業を完了できるはずだ。確かに見積もりの手法としては地に足がついたやり方です。しかし、同じ10行でも、必要な時間はタスクの性質や誓約によって大きく変わることを知らなかった。

新人がどのようなタスクがあってその時間になるのかを明かしていない

じゃあ、私たちが指摘しなかったことが悪いのではないか。これはもっともな指摘なのですが、どのようなタスクを体験して、新人がどのようなタスクがあると踏んでいるのかが私たちに明かされませんでした。私たちが知ることができたのはあるタスクがあって、100行くらいだから10N分という数字しか知らされませんでした。抜けているものがあれば指摘するべきとリーダーは言っていますが、内容が詳細でないため、何が抜けているのか判断のしようがなかった。
反論するための材料は満足に与えないまま、反論がないからこれが正しいってことでしょと考えたのは乱暴でした。

許されない反論があった

新人が見積もった時間には難易度によって、作業量が変わるということが考慮されていなそうでした。また、作るものが完全にわかっていて、よどみなく手を動かすことができたら、この時間で終わる。
初めに見たときに私はこの時間は短すぎるのではないかという指摘をしたと思います。それに対する回答は確かにその時間でできていたよ。それとも新人がこの時間でできるって言っているのにあなたは経験者なのにもかかわらずできないって言うの?非常に反論しづらいですね。私は面倒なのでこれ以上の反論はしませんでした。

ここまで、書いて新人のスケジュールの考慮漏れを責めているように見えますが、私としてはそのようなつもりはありません。それをコントロールするためのリーダーの判断や情報の開示などが下手くそだったのだと思います。初めてにしては地に足につけた方法でスケジュールを立てられたのは立派だったと思っています。

さいごに

リーダーは新しい、バイアスの受けていない純粋な思考を持って、閉塞したプロジェクトを照らそうとしたのだと思います。
今回は見積もりという個々のスキルの把握や、過去のプロジェクトの経験が必要な業務、過去に縛られない純粋な思考が役に立たないことがあることがわかりました。
“純粋な思考”というものが世の中にはあって、何物にも汚されていない純粋な思考があるというのはロマンチックな考え方だと思います。ですが、適用する場面はもっとよく考えて適用していただきたいと思いました。

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